「てっきり、何年も前からあいつのこと好きなのかと思い込んでたわ。白坂、いつもあいつを目で追ってたから」
「……そ、それはきっと、先輩の絵に憧れてただけで。それほど特別な気持ちはなかったのかな、と思います」
恥ずかしい……。
よりによって千尋先輩にそんな風に見られていたなんて。
「そうか? それにしてはお前、ずっと悩んでたみたいだったけど」
「悩んでた?」
「一回、俺に泣きついてきたことあっただろ」
「へ……?」
予想外の言葉にポカンと口を開ける。
天敵とでも言うべき千尋先輩に、私が泣きついた?
一体、何があってそんな状況に追い込まれたのだろう。不思議で仕方がない。
「えっと。いつのことでしたか?」
「お前、いくらなんでも忘れすぎ。俺がせっかく相談に乗ってやったのに」
呆れた目つきの千尋先輩が、私の頭を乱暴に撫でてきて、元々癖のある髪がぐちゃぐちゃに乱される。
「――千尋」
髪を直していたら突然低い声がかかり、びくりと動きを止めた。