「だいたい、蓮のどこがいいわけ? あいつは毎朝寝起き悪いし、のんびりし過ぎて毎回待ち合わせに遅れるわ、かなりの確率で人の話聞いてないわ、人間として面倒くさいヤツなのにな」
欠点の羅列に戸惑うものの、先輩には良い所もたくさんある、と思い直す。
「そうだったとしても。誰だって欠点はあるものだし、完璧な人なんていないと思います」
何より、先輩の長所は優しさで溢れているところ。思いやりがあって、誰に対しても自然と優しくできる。
そんな先輩を私は尊敬している。たぶん、中学のときからずっと。
少し離れた場所にいる先輩を確認してみたら、まだ村上さんと話を続けていて、こちらの声は聞こえていないようだった。
「でも……。どうして私が、前から先輩のこと好きだって思ったんですか? さっき、他の人にも言われました」
沢本君だけでなく、千尋先輩にまで同じことを言われるのは明らかにおかしい。
何か誤解される出来事でもあっただろうか。
「え? 違った?」
千尋先輩は意外そうに眼鏡の奥の目を瞬かせる。