「また困ったことがあったら、僕や千尋に遠慮なく言ってね」


 椎名さんに言われたのとよく似た言葉をかけられ、頬が緩む。


「はい。心配をおかけして、すみません。私がちゃんとしてないから……」

「……本当に心配だな、」


 柏木先輩はまだ何か言いたげにしていたけれど。隣のクラスの村上さんが柏木先輩に話しかけてきて絵を褒め始めたので、私達の会話は終了してしまった。
 キャンバスの前で会話を弾ませる二人を横目で見ていたら、胸がチクリと痛む。

 私は本当に、先輩のことが……。



「――なあ、お前さ」


 不意に、許可もなく隣の席に座ってきたのは、千尋先輩だ。片手でスマホをいじり、ついでのように私へ訊いてくる。


「蓮のこと、まだ好きなの?」

「……えっ」


 数秒かかって、やっと質問の意味を理解した。


「千尋先輩……、なんで知ってるんですか」


 “まだ好き”という部分は謎だったけど、柏木先輩のことを好きなのは当たっている。


「そんなの、見てたらわかるだろ」


 バレバレだ、と言いたげに肩をすくめた彼は、呆れた顔をして私を横目で捉えた。