「沢本がまた何かしてきたら、私に言って」


 私の肩に手を置いた椎名さんは、頼もしい言葉をかけてくれる。


「うん。本当にありがとう」


 170センチ近くありそうな椎名さんのことを見上げ、遠慮がちに微笑み返すと、なぜだかパッと目をそらされた。


「うわー……、あいつが白坂さんに執着する理由、何となくわかった」
「え?」
「いや、存在自体が可愛いって、罪だよねってこと」
「そんざい……」
「まあ、白坂さんは気にしないで」


 淡々と言った椎名さんは、自然な流れで連絡先を交換してくれて、私たちはそこで別れた。

 沢本君の嫌がらせを忘れさせてくれるくらい、椎名さんの存在は大きく。初めて話した憧れの人と少しだけ友達になれた気がして、教室への足取りが軽くなっていた。