「……あの。三井先輩とは、もう会ってないんですか?」


 言いづらそうに白坂さんが切り出す。


「会ってないよ」


 そう答えるものの、彼女の曇った表情は変わらない。


「そうですか……。最近も何度か一緒にいるところを見かけたから、てっきりまだ続いているのかと思って」


 いつの間にか見られていたらしい。

 バレンタインの日、白坂さんが真鳥という男と帰ろうとしていたのを見たとき。絡みついてきた三井の腕を、嫉妬のあまり振りほどかなかったことを思い出した。

 自分でも子どもじみていたと思う。白坂さんに見せつけるかのような情けない行動……。


 ふと、うつむいた彼女の肩にかかる緩い癖毛が柔らかそうで、触れてみたくなった。
 そんな衝動をどうにか抑えながら、誤解をとくための言葉を探す。

 高校に入り白坂さんをまた好きになったのは、あの日にチョコをもらったのがきっかけだった。
 心の奥底ではずっと白坂さんの存在があった。
 それに気づいた三井は自分から離れる決意をし、僕に別れを告げた。
 それでも、白坂さんと進展しないのを見て、時々三井は近づいてくる。