彼女が伯王高校に入学してきて間もない、部活見学のとき。気まずさの欠片もなく純粋な目差しで話しかけてくれた。
まるで、あの告白が最初からなかったというように。
確かに一年間会っていなかったし、時間が経過したおかげで関係がリセットされた気分になっている可能性もある。
だけど……それにしては何かがおかしかった。
もしかしたら僕が告白した事実すら忘れ去っているのかもしれないと、知らず知らずのうちに唇の端を歪めていた。
「……柏木先輩?」
白坂さんが不安そうな表情でこちらを見上げていることに気づき、我に返る。
「ああ、ごめん。美術室で僕が村上さんとしていた話、白坂さんも聞いてた?」
「……はい。すみません。ちょっとだけ」
恥ずかしそうに白坂さんはうつむく。
あのとき、ちらちらと視線を感じていたので納得する。
自分の彼女の有無を、白坂さんが少しでも気にかけてくれているなら嬉しいけれど。