「どうせ義理だろ、本気にするなよ」
「わかってます、私のこと好きな人なんて、いるわけないですもんね」
喧嘩になりそうな勢いを、穏やかな声が遮る。
「――ほんと、二人は仲が良いよね」
振り向けば、柏木先輩がまた筆を止め私たちを静観していた。
「こういうのは、仲が悪いというのでは……?」
私が首を傾けると、先輩は小さく微笑んだ。どこか寂しそうなその笑顔に、胸がちくりと痛む。
「千尋といるときの白坂さんって、自然体だなと思って。素でじゃれ合っている感じがして、楽しそう」
言われてみれば、柏木先輩といるときは緊張してしまうから、うまく自分を出せないけど。千尋先輩とは兄妹のような感覚で、普通に喧嘩までできてしまう。
「馬鹿言うな。こいつとは、じゃれ合ってるわけじゃないからな」
辛辣な千尋先輩の言葉に私は肩をすくめ、プレゼントを鞄にしまうために、そっとその場を離れた。