「千尋先輩のことだから、明日にはまた別の彼女ができていそうですよね」
知的で真面目そうな見た目によらず、彼女がいない時期がほとんどなく。常に切れ目なく彼女がいるタイプだった。
「そういうお前は、生まれてから一度も彼氏がいた試しがないんだったな?」
あっさり切り返され、への字口になる。
「私のことは放っておいてください」
柏木先輩の前で何も経験がないとバラされるなんて、恥ずかしすぎる。
当の柏木先輩は気にする様子はなく、空の絵の続きを描き始めていた。
「お前、手に持ってるの何?」
目ざとく私の手の中にあるプレゼントを指差し、千尋先輩が聞いてくる。
「な、何でもないです」
「まさか男からホワイトデーのお返し、もらったとか?」
一瞬だけ柏木先輩の方へ視線を流し、意地悪く笑う。