私は空の絵だけでなく、目の前にいる先輩にも憧れを持っていた。
 別に彼女になりたいとか、そこまでの想いではなくて。ただ時々一緒に絵を描き、話ができればという程度。

 先輩にはファンの子がたくさんいるけど、私はそこには混ざれない。
 気軽に話しかけに行けるその子たちみたいに、自分に自信があるわけではないし。先輩と並んでつり合いの取れるような見た目でもないから。


「最近、一緒にいる人……白坂さんの彼氏?」


 思いがけないことを言われ、画材の準備をしていた手が止まる。
 先輩の顔をちらりと見れば、いつもは涼しげな瞳が不安そうな色を宿して揺れていた。


「彼氏じゃないですよ、ちょっとした知り合いです」
「そっか……。じゃあ、これを渡しても怒られないかな」


 先輩が渡してきたのは、綺麗にラッピングされた箱。
 リボンには有名なケーキショップの名前がアルファベットで刻まれている。