「一番最初に結衣を好きになったのは、結衣が僕の絵を褒めてくれたときかな」


 そう打ち明けられ、思い出す。

 蓮先輩の絵を初めて見て、憧れを抱いて。
 そのときにはもう、絵を描く先輩自身のことも好きになっていた。


「親の薦めてきた高校には入れそうもなくて、親から呆れられて。絵のことにも自信を失くしていたとき。僕の絵を好きだと言ってくれた人がいた。それだけで僕は救われた気がしたんだ」


 ……知らなかった。
 何でもできる彼が、自信を失くしていたときもあったなんて。


「二度目は結衣が高校に入って、バレンタインのプレゼントを渡してくれた頃。三度目に好きになったのは、つい最近」
「つい、最近……?」


 花びらを描いていた手を止め、私は目を丸くした。

 記憶操作のために真鳥が私の額へキスをし、それを目撃した先輩が、私を避けるようになった辺りのことだろうか。

 私が蓮先輩の立場なら、そんなシーンを見せられたら立ち直れないし、忘れようと努力するかもしれない。
 なのに先輩は、こんな私をまた好きになってくれた……。


「結衣が傷ついているのを見て、やっぱり自分がそばにいて支えたいと思った」


 先輩は、どれだけ私の欲しい言葉を作り出すのだろう。
 そのどれもが、私に自信を与えてくれる。