「蓮先輩が助けてくれたおかげです。私は記憶を取り戻せたし、過去の自分とも向き合えたので。本当に……ありがとうございます」


 感謝の気持ちを込め、深くお辞儀をする。


「今まで、すみませんでした」


 思えば、先輩には失礼なことばかり言ってしまった。
 記憶を操作され、忘れていたとはいえ、何度彼を傷つけたかと思うと心が痛む。
 それこそ、とっくに嫌われてしまっていても、おかしくはない。

 そして、一番謝らないといけないのは――


「中学のとき、先輩の告白を断ってごめんなさい」
「……」
「すごく、嬉しかったのに」


 今頃後悔しても、取り戻せない。
 先輩を傷つけたことに変わりはないのだから。


「結衣……」
「過去の自分を知られて、軽蔑の目で見られたらと思うと、怖くて受け入れられなかったんです」


 弱くて、そんな自分が情けない。
 なのに先輩は、歩みを止めたあと、私の髪を優しく撫でてくれた。


「僕の方がごめん。ずっと結衣が苦しんでいたのに、気づいてあげられなかった」
「そんな……、先輩は悪くありません」


 そばにいる彼を見上げたら、切なさを混じえた真剣な瞳と視線がぶつかって、心臓がドキリと高鳴る。