私は中学時代、周りから嫌われて、いじめられていた……。

 薄々、そんな気はしていたけれど。
 いざその事実を突きつけられ、自分の好きな人たちにまで過去を知られてしまうと、いたたまれない気分になる。

 本当は今すぐ、ここから逃げ出してしまいたい。

 でも……。何かを言わないと、一方的に誤解されたままだ。
 そう思い立ち、必死で蓮先輩に気持ちを伝える。



「私は、蓮先輩に嫌われたとしても。先輩の絵はずっと好きです。好きでいさせてください……」
「――結衣」


 蓮先輩が目を見開く。
 ほんの欠片でも、私の想いが彼に伝わっただろうか。
 三井先輩は小さく舌打ちをして、私の台詞はなかったかのように説得を再開した。


「この子のそばにい続けて、蓮まで周りから嫌われたらどうするの。一緒にいれば、変な目で見られるよ」
「……どうして、僕も結衣を嫌わないといけないの?」


 蓮先輩は静かに問い返した。


「だって、みんなから嫌われていた子だよ? 一部からとはいえ、いじめられていたんだよ!?」


 蔑んだ目で、三井先輩は私を睨みつける。



「たとえ、過去に嫌われていたからって、今の結衣のことを嫌う必要があるの?」


 三井先輩とは対照的に、蓮先輩の声に怒りや蔑みは含まれていない。