「蓮? どこに行くの?」


 二人のあとを追い、廊下を足早に進んでいたとき。

 いつの間にか近距離にいた三井が、袖を引いて遮ってきた。

 それを無意識に軽く振り払った自分は、思いのほか冷たい態度を取っていたらしく。

 彼女は自分の手を押さえ、顔を引きつらせた。


「蓮……」


 傷ついた目をした三井のことは気にせず、裏庭へ急ぐ。

 もう、結衣のことしか頭になかった。



 校舎裏へたどり着くと、奥に人の気配がした。

 一人の男子生徒が、校舎の壁に結衣を押しつけているのが見え、驚きよりも怒りが先に立つ。



「っ、ちょっと待ってよ、蓮!」


 撒いたはずの三井が追いかけてきたが、振り返らずに結衣の姿だけを注視した。

 彼女の表情は苦しげで、今にも泣き出しそうで。
 とても目の前の男を受け入れているようには見えない。

 だから、結衣を助けなくては――そう、決意を固めた。

 たとえ、結衣の気持ちが自分になくても。