私の斜め前を歩く蓮先輩は、普段よりも口数が少ない。
 何より、笑顔がなかった。
 どことなく冷たい横顔で、近寄りがたい雰囲気を漂わせている。

 何か気にさわることをしてしまっただろうか。
 聞きたいけれど、とても聞けない空気で。
 未琴に忠告されたことを意識したせいもあって、うまく会話が弾まなかった。





 全体的に白っぽい外観。洋館という印象のその家が、蓮先輩の住む家だった。
 大きな石畳の上を歩き、家の中へと案内される。
 家族の人は皆、出かけているらしく、辺りは静まり返っていた。
 カタ、と先輩が廊下に鞄を置いた音さえも、妙にクリアに耳へ届く。


「どうぞ」
「お邪魔します……」


 かすれた声が吹き抜けの玄関に響く。


「そんなに、緊張しないでいいよ」


 そこでようやく先輩が目元を緩めたので、ほっとして家の中に上がることができた。