「わー、中庭で昼間からキスするなんてすごいね。積極的。彼女の方も全然嫌がってなかったみたいだし」
ちらりとこちらの様子をうかがいながら、三井はほくそ笑んでいる。
この時間、結衣が中庭に来ることをなぜか知っていて、わざと目撃させられたのだと気づいた。
「ね、これでわかったでしょう? 彼女はすでに、あの男の子のものだって」
これ以上、彼女のことを想っていても無駄だと、三井は暗に告げてきた。
結衣は嫌がっているそぶりがなく。
彼の方は愛しげに結衣の髪を撫でていて――。
さすがにそれを見てしまったら、彼女のことを忘れるしかないのではと気持ちが沈む。
真鳥は結衣の肩を抱き寄せたまま、校舎に入っていった。
三井は機嫌よく教室へ戻り、自分はしばらくその場に残る。
廊下の向こうで――結衣の同級生、永野未琴が腕を組み、柱に寄りかかってこちらを見ていたが。それを気にしている余裕はなかった。
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