「それなら、早く忘れたらいいんじゃない? どう考えても、白坂に勝ち目はないだろ」


 失礼なことを言い放ち、強く腕を引いてきたので、真鳥に泣き顔を晒すことになってしまう。


「俺が忘れさせてやるよ」


 泣き顔を間近でじっと見つめ、勘違いしそうな台詞を言ってくる。


「ちょっと寄り道してから、家まで送るから」


 低くそう言ったあと、真鳥は私の手首を掴み歩き始めた。





 真鳥に連れられてきたのは、学校から歩いてすぐの所にある、まだ雪の残る公園だった。
 中央に滑り台やブランコがあり、その隣には東屋があった。
 真鳥はそこに私を案内し、木のテーブルに鞄や荷物を置く。まだ雪が解けていないこともあり、私たち以外誰もいない。


「で、今から白坂の記憶の一部を消すけど、本当にあの先輩のことを忘れたい?」
「……え?」


 記憶を、消す?

 簡単にそんなことを言うけれど。普通に考えて、誰かの記憶を消すなんて有り得ない。


「何言ってるの?」
「信じられない、か。まあ普通はそうだよな」


 東屋の下で私と真鳥は向かい合う。