「そうだ白坂さん。今度一緒に帰らない? 学校の近くに行ってみたい雑貨屋があるんだよね」
「えっ、いいの? 美容室の向かいのお店だよね。私も前から気になってたんだ」
「ほんと? じゃあちょうど良かった。部活ないとき一緒に行こう」


 涼しげな瞳を輝かせ、椎名さんは爽やかに笑った。
 できることなら、真実を知らないまま、ぬるま湯につかっていたい。
 本当はこのまま平穏な生活を続けていきたいし。自分の好きな人、大切な人には私の闇の部分を知られたくない。
 そんな都合のいい話はないと、わかっているはずなのに……。





 昼休みになり、複雑な気分のまま私は中庭に呼び出された。
 強い陽射しを避けるため、木陰で真鳥と向かい合う。


「最近、何か変わりない?」


 青空をちらりと見たあと、軽く首を傾けた真鳥は何気なく訊いてくる。


「変わったこと……そういえば私、たまに過去のことを思い出すんだ」
「――え? たとえば、どんなときに?」


 切れ長の目を丸くした真鳥は、こちらへ一歩足を踏み出した。