ドキドキしすぎて視線をさまよわせていたら、不意にグラウンドの端にいた真鳥と目が合った。

 その瞬間――

 静かな風のような、優しい何かが私の頭の中に流れ込んできた。



『……約束だよ』


『また、あの空を一緒に見ることができたら。
この絵を完成させよう――』



 それは――蓮先輩の声だった。
 なぜか懐かしさを感じる、落ち着いた声音。


 ……もしかして。
 先輩に触れられたとき、真鳥と目が合って。その拍子に、忘れていた過去の出来事を思い出した?

 その可能性は十分にある。

 過去の記憶を取り戻したときは、たいてい蓮先輩に触れられていて。
 私の過去に関係する人――真鳥や沢本君と目が合っていたから。



 『この絵』とは一体何だろう。

 今回は全体的なイメージが白っぽくなっていて、ほとんど先輩の声しか聞こえなかった。
 その絵が何か思い出せれば、全て思い出せそうな気さえする。