「結衣。何も言わずにどこかへ行かないでね」
まるで心を読まれたみたいに、まっすぐ見つめられる。
「約束だよ」
何も言葉を発せないまま、蓮先輩の瞳を見つめ返していると。
フェンスの向こう側から、部活中の生徒たちの声が聞こえてきた。
野球部やサッカー部、陸上部などの活動している様子が遠目に確認できる。
私は無意識にサッカー部の試合を目で追っていた。
「――あ。今、シュートを決めたのって、真鳥君だね」
「はい……、たぶん」
ちょうど私たちが通った場所はサッカーゴールが近く、何人もの選手の中に真鳥がいることに気づけた。
喜ぶ数人のメンバーから、頭をぐちゃぐちゃにされている。
「確かに格好いいね、彼」
緩く微笑んだ蓮先輩が、ぽつりとつぶやいた。
私や他の誰かが真鳥を褒めていたことなんて、なかったはずなのに。
どうして急に……?
「真剣な目をしているときって、惹かれるものがあるよね」