「真鳥、ちょっと待って」
「……何、白坂」


(やっと捕まえた……!)


 放課後、一人きりで廊下を歩く真鳥に、ようやく話しかけることができた。
 教室に忘れ物でも取りに来たのか、サッカー部の青いユニフォームを着ている。

 なぜかずっと、私を避けていた彼。
 二人だけで話すのは動物園以来だ。


「私の過去について、教えてほしいの。この前、途中でやめたでしょ」


 ひと気の少ない校舎の隅に誘い、真鳥を睨み上げる。


「過去、ね……」


 真鳥は窓の向こうに広がるグラウンドへ目線をずらした。


「前にも言ったけど、別に知らないままでいいんじゃない? もともと、過去を忘れたいって言ったのは、白坂だよ?」
「……それでも知りたいんだ。私だけ知らないまま、呑気に学校生活を送れないよ」


 深く溜め息をついた真鳥は、私へ向き直った。


「どうしてもって言うなら、教えてやれないこともない、けど」
「本当?」
「どうなっても知らないよ」
「……うん」