「これは……その……モニカの言う通り、甘味が好きというのもあって……」
「甘いものが好きでも限度というものがあります。
 それに、お砂糖を沢山いれる方法以外にも、砂糖と一緒に少しだけ塩を入れてみるとか、果物のジャムを入れてみるとか、果物や花を浮かべてみるとか、色んな工夫が出来るはずです」
「果物や花を浮かべる飲み方は、貴族の女性を中心に人気の飲み方なので知っていますが……。ジャムや塩を入れるんですか?」
「私が住んでいた国ではありませんが、紅茶にジャムを入れて飲んでいる国もあるそうです。実際は、紅茶と一緒にジャムを舐めるのが正しいとも言われていますが……。
 私も試したことがありますが、紅茶とジャムの甘さが非常に合っていて、美味しかったです」

 御國だった頃、紅茶にジャムを入れて飲む国があると聞いたが、一説によると、紅茶にジャムを入れるのではなく、紅茶と一緒にジャムを舐めるのが正しいとも言われていた。
 ジャムなら、マキウスの世界にもあり、よく食卓にも出てくるので、広く流通しているのだろうと思った。

「それなら、塩も他国での飲み方なんですか?」
「いいえ。塩は砂糖の甘さを引き立てる効果があるそうです。砂糖と反対の味である塩を同時に摂取すると、脳が錯覚を起こして、甘みが増したように感じるって聞いたことがあります。それを味の相乗効果って言うような……」

 御國だった頃もあまり料理をしなかったのでそこまで詳しくないが、砂糖と一緒にひとつまみの塩を加えることで、脳が錯覚を起こして、甘さが増したように感じるらしい。
 俗に言う、「かくし味」も、この脳が錯覚を起こしたことによる効果だと聞いたことがあった。

「砂糖を入れる以外にも、様々な飲み方があるんですね。今度、試してみます」
「そもそも、あの国に果物や花を浮かべる飲み方があるなら、それをやった方がいいと思います。
 お砂糖を大量に入れるよりは、まだ良いです」
「それは……」
「それとも、入れられない事情でもあるんですか。女性しかやってはいけない飲み方とか」

 モニカが問い詰めると、やがてマキウスは諦めた様に頬を赤く染めて話し出したのだった。

「女性の前では格好をつけたいから、砂糖だけ入れて紅茶を飲んでいたんです。……特に好きな女性の前では」

 納得しかけて紅茶に口をつけたモニカだったが、けれどもふと気付くと、カップを置きながら「好きな人の前?」と繰り返した。

「マキウス様の好きな人ですか?」
「……貴女のことです。モニカ」

 呆れ気味なマキウスがため息を吐くと、自分の頬が赤くなっていくのを感じた。

「私のことだったんですね……」
「貴女以外、好きな女性はいません」
「そうですか……」
「無論、まだ赤子とはいえ、女性であるニコラも好きです。ですが、一人の女性として愛しているのは貴女だけですーーモニカ」

 熱烈なマキウスの言葉に、モニカは耳まで真っ赤になる。

「あ、ありがとうございます。嬉しいです……」

 そして、マキウスから目を逸らすと、残っていたパンケーキを食べたのだった。

 御國の時に食べたパンケーキを再現したはずなのに、何故か前に食べた時よりも甘く、あの時よりも美味しく感じられたのだった。