にぎやかな二次会会場を後にすると夜の静けさが心を落ち着かせる。
友美のあの笑顔を思い出しては自分も笑顔になる。
幸せを分けてもらったようだった。
「幸せか……」
 前にも幸せな空気を羨ましいと思っていた。
でも、今はなんだか違う気がしていた。前よりもきれいな心からの意思。そう感じた。
「じゃあ、俺と幸せになる?」
 後ろから聞こえた声に私は思わず声を上げた。
そこには今一番会いたくない結月がいた。
「さとみん、いつも想像以上に驚いてくれるよね」
 笑いながら言う結月を前にすると胸が苦しい。
「なんでいるのよ。あんたは残ってなきゃダメでしょ」
「だって来てくれた人見送ってから家で団らんするから時間あるんだもん」
「だからってなんでわざわざ……」
 やっぱりおかしい。なんでこんなに冷たくしてしまうの?
結月が悪いわけではない。私が一歩壁を作っているんだ……

 沈黙の間、私の頭は真っ白だった。
このままいたらダメだ。
私の心のどこかが合図した。
「じゃあね」
 私は目を合わせず足を進める。
「俺のこと好きなんでしょ」
 結月のその一言で足を止める。
その瞬間に私の頭の中でよぎった。
わかった……
この感情が何なのか。そしたら今までの全てがわかる。

 私は足を止めたところで振り返った。
「そうよ」
 これだ……
私は結月が好きだ。だから素直になれなかった。
今まで自分の感情にふたをしていた。
だからわからなかったんだ。

 一度出た感情は止まらなかった。
「結月が好きよ。でも……」
 沈黙の間が私の心をコントロールできなくしている。
「でも、あなたに私は恋をしちゃいけない。年齢もそう。今までの自分もそう。あなたはまっすぐで純粋。でも私は違うの。それでもあなたが好きでどうしたいいのかわからな……」
 言葉を止めたのは私の口を何かがふさいだから。
頬にある手。目の前にいる結月。
私に結月はキスをしている。
しちゃいけない。でもその時間に抵抗できなかった。