とうとう待ちに待った日がきた。
有給を使って仕事を休んだ今日。
私の中でとても嬉しい日だった。
「里美!」
 私を見つけるとすぐに幸せそうな笑顔を見せてくるのは友美。
今日は友美の結婚式。とてもきれいなドレス姿に見とれるようだった。
「きれいだね友美」
 自然と昔のような笑顔を取り戻しているのは不思議だった。
結婚って魔法のようだなとまで思った。
「そういえば、一彦君。来られないんだって。幼馴染だし、里美は会ってるの?」
 魔法が一気に溶けたように私の中で衝撃が走る。
「会ってないよ」
「そっか。でも里美も早く結婚できるといいね」
 そうやってまた幸せそうな顔に戻る友美。
きっと幸せだからあんなに笑顔が輝いているんだなと思う。
一彦のことを言われたとき、確かに不意を突かれたように衝撃が走った。
でも、もう笑顔に戻れないほどダメージを負うこともなく、なんだか耳からすり抜けていくようだった。

 あっという間に時が過ぎ、二次会に入った。
その場にいる人たちは笑顔で会話している。
私もその場を楽しんでいた。会話がこんなにも楽しい時間を生み出すことを知り、仕事に生かしていこうと考えていたころだった。
「横いい?」
 そう言われて私は横を整理して「どうぞ」と目線を上げた。
その瞬間私の時間が止まったようだった。

見ると、笑顔の結月がこちらを見ている。
どうぞと言ったからには横に座るのを耐えなければいけない。
もちろん笑顔の結月はこんなにも近くに座るものかというぐらい近くに座った。
ダメだ。平然としなければ……
我に返るように私は目の前にいる友人と話していた。
その会話に結月は自然と入っていた。
やっぱりこの子は誰とでも話せる子なんだ……
ショックではない。でも遊ばれているという考えに少し釘を刺したようだった。
楽しい時間なのに。平然と笑える時なのに。
なぜ私は結月の一つの行動でこんなにも感情が変わるんだろう……
冷静になるように私は下を向いた。
少しでも自分を取り戻そうと。
でも私の胸は大きく鳴り、顔に熱が入る。
私の手をきれいで細い手が握っている。
その手は結月の手。
驚きで思わず結月を見てしまう
でも結月は何事もなかったように会話を続けている。
耐えられない……
「ごめん。ちょっとお手洗い行ってくるね」
 作り笑顔を見せて私は手を振り放った。

 遊んでいる。からかっている。
それなのに私はこんなにも動揺している。
自分に呆れるようだった。
頭を抱える私の中は結月のことでいっぱいだった。