あの日から何週間か経ち、少し冷静さを取り戻した。
やはりこの年齢差で結月が本当に私に気があるのかと考えると想像もできなかった。
仮に私に気が合ってもこの年齢差ではいろいろ課題や問題が出てくることもわかった。
そのことがわかってくると、複雑な気持ちだった。
私が複雑になる権利はないのだろうけど……
今まで興味を示さず、冷たい態度まで取っていた私。
さらにはいけない恋をしていた私があんなにも将来性のある結月のそばにいていいのかとすら思う。

 仕事終わりに携帯見ると結月からメッセージが来ている。
よく飽きずに今までずっと話しているな……
いつも話すのは「このテレビが面白かった」とか「今日は雨だから外に出るのがだるい」とかどうでもいいような話から「どんな人が理想?」などと恋愛を絡めてくる話題までいろいろだった。
それでも最近は仕事終わりに必ず会話をしていた。

 玄関で靴を脱いで誰もいない部屋に「ただいま」と言って扉を開ける。
そのままの流れで冷蔵庫からお茶を取り出してテレビをつける。
「これか、結月が言ってたの」
 いつもは疲れてテレビを見ることすらしなかった私。
それが今では結月の発言を確認するようにテレビをつける。
確かに面白い……
最近の生活はそんなことの繰り返しだった。

 でもふと我に返ると私はテレビも見ずに黙ってしまう。
一彦とは全く違う感情を結月には抱いていた。
「やっぱりわからない……」
 一人の私がつぶやいても返ってくる言葉はない。
結月に会ってからおかしいと思うのは毎日のようだった。
今度会ったときにはわかるのかな。
そう思って私はソファに横になって考え、いつの間にか目をつぶっていた。