夜の闇の中でも明かりを絶やさない街灯。
その街灯の光が眩しすぎて私はうつむいて歩いた。
自分の足が力なく動いている。
感覚なんてものはなかった。

 頭に浮かんでくる断片的でも繊細な記憶。
その記憶が私の頬を濡らす。

 その頬を濡らしているのが変わったことに気づいたのは目の前にたくさんの雨粒が現れてから。
それでも私は一人。ゆっくりと歩いていた。

 私の今までの気持ちは何だったんだろう……
こんなにも儚く散ってしまうものなのか……
この関係にはいつか終わりがあることを最初の頃はわかっていたはず。
それでも私は沼にはまっていった。
人の不幸も考えず。
自分が誇りにしたい仕事があるにも関わらず。
「最低だ……」
 一言つぶやく私。
その言葉は雨の音でかき消されていく。

 一度目を閉じると笑顔の記憶が悲しみに変わって、雨と同時に頬に伝う。
いつしか私は息がつかえるほど泣いていた。
それでも降りやまない雨。
私の視界に入っている足元。
そこに私のではない靴が見える。
見えると同時に私の体に当たっていた雨が止まった。