「この話は、誰にも相談できなくて、一人で抱え込むことしかできなかったから。
 だって、もし友達に相談することができてその時私の心が軽くなっても、その後みんな私を腫物に触るみたいになってよそよそしい関係になるかもしれないでしょ?
 だから、別に変な意味じゃないんだけど。今日話せた相手が香山君でよかった」
 変な意味じゃないと彼女は言ったけれど、つまり僕がこの話を聞いた後に色眼鏡で見られても構わない相手だったのだと間接的に言われたような気がした。
 しかし彼女の笑顔は先程よりも明らかに晴れやかになっていたから、嬉しいようで傷つくような、複雑な心境だった。
「香山君の声、初めて聞いた気がする。予想以上に低くてビックリしたけど、聞いていて気持ちが和むような優しい声。香山君の傍に居ると、なんだか落ち着くな」
 うっとりとした様子で言う彼女に、僕は緊張感を覚える。
 傍に居る、その一言を聞いただけで心の中が騒ぎ心臓が高鳴った。
 そんな僕の心境を見透かしたように、彼女は上目遣いに言う。
「ねぇ、香山君?またこうやって二人で話せないかな?もっと香山君の事、知りたいから」
「・・・い、いいよ。もちろん」
 そう言い返すのがやっとだった。きっと今僕の顔は真っ赤に染まっているに違いない。
 夕日が照らしてくれて助かった、うぶな男子はこういう展開にめっぽう弱い。
「今日は夕日が綺麗だね」
 屈託のない笑いを浮かべながら言う彼女。
 その姿が今まで見てきたどんな物よりも綺麗に映って、僕は目に焼き付ける様に彼女を見ていた。