そして僕は外の路地を歩いていた。
あれだけ太陽を嫌っていた男があっさりと外出している辺りおかしく思うだろうが、この状況でじっとしていられる程僕の肝は据わっていない。
当初はコンビニを目指していたが、すぐに取りやめた。
この姿でお酒と煙草をレジに持っていっても売ってくれるわけがない。
似た目は小学生で、それも上下のスウェットはぶかぶかで裾を引きずりながら歩く有様だ。
靴はサイズが合わないので、仕方なくサンダルをつっかけている。
警察に連絡され保護される未来が容易に想像できた。
その時この状況をどう説明すればいいのだろう。
考えるだけでも途方に暮れそうだ。
結局僕が向かった先は近所にある洋服屋だった。
先ずはぎこちないこの格好をなんとかしよう。
ただでさえ人目が苦手なのに、視線を引くような服装は恥ずかしくて仕方がなかった。
子供用の服を適当に数点選んで購入することができれば一つの問題は解消できる。
レジに向かうまでは不審がられるだろうが、大丈夫。
すっと入って即座に購入し着替えることができればこっちのものだと委縮する気持ちに言い聞かせた。
もう少しで住宅街の路地を抜け県道が見える。
すぐにある横断歩道を渡れば洋服屋は見えてくる。
横断歩道を渡る際、車に乗っている人達から送られる冷ややかな視線を想像した。
渡る途中、恥ずかしさにやられ道路の真ん中で吐いてしまうのではないかと思うほど痛々しい光景だった。
視線恐怖症の僕からすればやりかねない結末だ。
道路が近づいてくるたび身震いした。
逃げたい、やっぱり外に出るんじゃなかった。
そんな僕の気持ちとは裏腹に足は自然に一歩一歩踏み出していく。
家を囲うブロック塀を抜け歩道に出た時だった。
「・・・え?」
そこには誰もいなかった。
歩道を行き交う人達も、視界を遮るように走る車も、建物を縫うように通ったモノレールも。
人の動きを感じさせてくれるもの全てがこの場に通っていなかったのだ。