ローテーブルには彼女の作った温かな料理が並べられていた。
茶碗に盛られた白いご飯とお味噌汁からは湯気がモクモクと上がっていた。
白く平べったい皿にはボール状のコロッケと瑞々しいレタスとトマトが乗せられ、色合いが考えられた華やかな食卓になっていた。
腰を下ろそうとした時「まずは手洗いうがいだよ」と彼女に注意され洗面所に引っ張られていった。
手を洗っている間も、彼女は腕を組んで僕を見張っていた。
まるでお母さんの様で、ユリナは小さな頃からこんなにしっかりとした子だったんだなと今更ながら感心を覚える。
はっきりした物言いと、家庭的な料理、僕の部屋をせっせと掃除してくれた几帳面な性格。
きっと元の世界の彼女は、素敵な女性だったんだろうな。
そして僕は彼女に敷かれてあれこれ文句を言われていたに違いない。
想像すればするほど、それは微笑ましい光景だった。
手洗いうがいを済ませ彼女の許しを得ると僕はようやく腰を落ち着けられる。
彼女も向かい側に座ると、僕達は示し合わせたように合掌する。「いただきます」と互いに言うと彼女は嬉しそうに笑みを浮かべた。
僕が食事に手を付けている間、彼女は僕の反応を楽しむようにニヤニヤしながら眺めていた。
コロッケを一口齧って中にカボチャが入っている事に驚くと、狙い通りと言わんばかりに彼女はクスリと笑った。
こんな芸当もできるのか、コロッケとご飯を口に含んで飲み込むと美味な味が口いっぱいに広がった。
「凄くおいしいよ。ユリナは料理が上手だね」
率直な感想を述べると彼女は片手を首に当て照れたように身を捩った。
「えへへ、おかわりはまだあるからね」
キッチンワークスペースに置かれたプレートにはコロッケがあと五個程残っていた。
「張り切って作り過ぎちゃって、明日のご飯にしてもいいかもね」
「・・・そうだね」