そこで僕は彼を見る。
 蔓延っていた疑問点が、一つに合致したような感覚があったからだ。
「まさかあなたは、その事を伝えるためにここに来たんですか?」
 彼は微笑みを浮かべ、僕の肩に大きな手をポンと置いた。
「一種の賭けだったけどね。
 奇跡的に君たちと同じ夢の中に入ることができた。
 案外、夢っていうのは時間の概念がないのかもしれないね。
 そこに行きたいと願えば、願いの強さだけその世界に導いてくれる、そんな気がするよ」
 置かれた手の温もりが熱く、彼がどれだけ強く願ったのかが伝わってくるようだった。
 彼は真っ直ぐに僕を見て、その目は僕に多くを託しているように見えた。
「目が覚めて、君が何をするべきなのか。
 今の君なら、もうわかるだろう?」
 心に熱い思いが流れてくるようだった。
 彼の後悔を、僕は無駄にしてはいけないんだ。
 彼は立ち上がり、僕の肩から手を離す。
「僕が伝えたいことは全部伝えた。
 後は君次第だ。任せたぞ」
「・・・はい。必ず」
 自らに誓うように、僕は強く言葉を返した。
 僕達はしばらく互いの視線を交え、彼が笑みを浮かべるまでそれを続けた。
 未来の僕はこんなにかっこよくなるのだと思うと、少し嬉しい気持ちになった。
「よし・・・それじゃ」
 そう言い残して彼は歩き出す。
 木漏れ日に照らされたタイルの道を進み、徐々に背中が遠ざかっていく。