「あるきっかけがあって、九年ぶりにこの町に戻ることになった。
 地元の同窓会に誘われて、今までは頑なに断ってきたんだけど電話まで掛けてきて勧誘されてさ、上手く断れず渋々出席することになったんだ。
 君は覚えてないだろうけど、僕とユリナは高校が同じでその時から付き合っていたんだ。
 当時僕とユリナが付き合っていたことを知っていた同級生がユリナの事を話し始めてさ、その流れで知ったんだ。
 彼女が亡くなったことを。
 嘘だろ、それは本当かとそいつを問い詰めると当然知っているかと思っていたと言われたさ。
 次の日、事前連絡もなしに彼女の実家に訪問したよ。
 玄関からは彼女の母親が出てきた。
 付き合っていた当時は何度か面識はあったけど、まだ彼女は覚えていてくれた。
 いつか来ると思っていました。
 そう言って中に通してくれた。
 和室に置かれた仏壇にはユリナの写真が飾ってあって、本当に亡くなったのだと僕はその場に崩れ落ちた。
 実感は沸かないが、信じざるを得ない状況が目の前にあった。
 お線香を立てさせてもらい手を合わせた後、彼女の母は最期に残したノートを僕に見せてくれた。僕はそこで自分の過ちを知ることになる。
 悔やんでも悔やみきれない、涙は止めどなく溢れ流れた。
 どれだけ悔やんでも、もう彼女は帰って来ない。
 その揺るぎない事実だけがどうしようもなく立ち塞がり僕を責めてくるようだった。
 その後お母さんはユリナのお墓を案内してくれた。
 綺麗なお墓で、しっかりと手入れをされていることが目に見えて分かった。
 お墓の前で立ち尽くしながら、僕は彼女と会った最後の日々を思い出す。
 僕が思い出したのは、彼女に振られたあの日ではなかった。
 ふとした時に見た、不思議な夢のことだった。
 それが、今見ている君の夢の事だよ」
 その話をここまで聞いて僕は固唾を飲む。
 彼も僕なら、同じ夢を見ていたとしてもおかしくない。
 しかし約十年前に見た夢の事を、彼は覚えていたというのか。