病院の広場に設置された樹脂デッキのベンチに腰掛け、目の前にある公園を眺める。
近所の錆びれた遊具ばかりの公園と違い比較的新しい物ばかりが設置され、鮮やかな青色の滑り台や黄色いブランコ、広く設けられた砂場には足跡や砂山を作った跡がありデコボコとしていた。
囲うように緑の葉が生い茂った植栽が植えられ、人工物と自然の調和が取られていた。
もう一人の僕は両手に缶コーヒーを持ちこちらに近づいてきた。
僕の手元に冷たいブラックコーヒーを置き、ベンチの隣に同じように腰掛けた。
もし傍から見る人がいたなら、僕達は親子のように映るのかもしれない。
彼はプルトップを開け、コーヒーを一口飲む。
それだけで満足したのか缶を口元から離しベンチに置く。
一息ついた後、彼は沈黙を破るように言葉を発する。
「誰もいない世界ってのは気持ちがいいものだな。
邪魔者が一つも混在しない、目の前の美しい世界だけがただ広がっている。
人間ってのは、地球上で一番醜いごみくずだと僕は思うよ」
彼は僕と同じように公園を眺めながらこの世界の率直な感想を言う。
それについては僕も同意見だが、今はそういう事が聞きたいわけではない。
結局あなたは僕なんですか、僕に手紙を送り続けていた意図はなんだったんですか、この世界の正体をあなたは知っているんですか?
聞きたいことを言い出せばキリがない。
そんな僕の雰囲気を察したのか、彼は僕の方を見て小さく笑う。