死にたい、楽にして、苦しい、死にたい。
これ以外にもう、思う事は無いのだろう。
彼女の心はこの時点でとっくに病気によって壊されていた。
今までページの線に沿って書かれていた文字は既に線上に乗っておらず、落書きされたノートの様に、彼女の字とは思えない筆圧の濃い字でページ一面が埋め尽くされていた。
そのページを眺めていると、彼女の抱いていた苦しみが流れ込んでくるようで胸が締め付けられるような感覚があった。
僕が知らない間に、彼女の心がここまで荒れていたなんて知らなかった。
たぶん彼女はこんな状態でも、他の誰かと会うときは愛想笑いを浮かべて自分は大丈夫だと相手を安心させるような言葉を言っていたのだろう。
でも実際は違う。彼女は誰にも相談できず、自分一人で抱え込み、一人この部屋で泣きながら苦しんでいたのだ。
捌け口は一冊のノートに当たるように文字を書くしかなく、それ以外に本心をぶつける手段はなかった。
僕が彼女の傍にいてあげたら、何かが変わっていただろうか?
彼女は僕に縋ってくれただろうか、それとも僕を心配させたくなくて強がりながら笑みを浮かべていたのだろうか。
自分が情けなくなる。
彼女の恋人で近くにいたのなら、なぜ異変に気付いてあげられなかったのだろう。
彼女はきっと心の中では、気づいてほしいと思っていたはずなのに。
ページを捲ると破れた痕があった。
恐らく彼女の部屋で見つけたページの一部がここにあったのだろう。
手紙の差出人がこのノートからそのページを破り、本棚に仕込んでいたのだと推測する。
次のページからは何も書かれていない。
ここで日記は終わってしまったのだろうか。
指先で弾くようにペラペラと捲っていき、最後のページで止める。
そこには彼女の、このノートで最後の言葉があった。