それから九日、十日と短くも日記は毎日更新されていた。
<今日はお母さんと一緒に叔父さんも来てくれた!叔父さん、なんだか会う度にお腹が大きくなってるね!
昼ドラを見ている最中に看護師さんが入って来て気まずい空気になった。違うんだよ!別にそういうのに興味があるわけじゃないからね!
梅雨明けが発表されたよ!いーなー。私も外に出たいー。海水浴とかキャンプとか花火大会とか、好きな人と行きたいよー>
好きな人、というのはやっぱり僕の事だろうか?
僕の名前がどこかで出てくるのかなと思ったりはしたが、いざ好きという文字を見ると心臓が跳ねてしまう。
彼女の日記は長い時で五行に渡り綴られていたが、極端に短いときは暇だった、寝てた、とただの一言日記になっている時もあった。
気分次第な性格は少女のユリナとそっくりだ。
二か月ほどは毎日書かれていたが、急に更新は途絶え次に書かれたのは三か月後の事だった。
〈十一月十四日 曇 もう日記をつけるのはやめるつもりだったけど、戻ってきちゃった。でももう毎日書くのは疲れるしいいや。
これからは特別嬉しいときか、凹んだときか、どうしても書き留めておきたいことがあれば書くことにするね。正直もう、疲れちゃったんだ〉
やっぱり飽きたか、と読み通りの展開に笑みがこぼれそうになったが、最後の一言を見て自体は僕が思うよりも深刻なのだと感じた。
それからページを捲る度、彼女の悲痛な叫びが幾度となく綴られていた。
日付と天気が書かれる事は無く、ただ同じ様な言葉が繰り返し使用され書き殴るように書かれていた。