県道から外れ、緩やかな坂道を登った先に病院はあった。
広大な敷地に白いタイルが並べられ、その上に木目調のベンチと一定の間隔で植栽が植えられていた。
そびえ立つ病院の外壁は全面白く塗装され、部屋の数だけ同じ形の窓がいくつも設置されていた。
自転車を玄関口の庇の中に駐車し、自動ドアから中に入ると吹き抜けのロビーが広がっていた。
電球色のダウンライトが煌びやかに室内を照らし、真ん中にはアクリル板の貼られた廻り階段が設置されていた。
ロビーを横切り隅にあるエレベーター扉の前に立ち、上階のボタンを押す。
しばらく待つと両扉は静かに開き、中に入り三階のボタンを押して扉を閉じる。
異音も揺れもなくスムーズに動くエレベーターに一瞬ちゃんと上に上がっているのか不安になったが、すぐに扉は開いて三階フロアに着いた。
三〇一号室、頭の中で唱えながら袖壁に掛けられたプレートに目を通していく。
ナースステーションの前を通り過ぎ、すぐ隣に三〇一号室の病室はあった。
プレートに木村ユリナと書かれてあることを確認し、引き戸の取手に手を掛け開ける。
自分の身長よりもはるかに高い大きな建具の割にはあまり力を加えずスムーズに開閉することができた。
蛍光灯の光が反射したリノリウムの床を歩き、袖壁の先に囲いが設けられその中に柔らかそうなベッドが見えた。