僕達は、別れていたのかもしれない。
 それでも彼女との思い出を捨てきれず、目に見えない場所に彼女との品を隠していた。
 自分で言うのもなんだが、僕はそんな女々しい事をする奴なのだ。
 それでも、さっきの写真に写る二人は世界で一番幸せなカップルに見えた。
 喧嘩することはあったとしても、別れるまで話が陥ってしまうものなのだろうか。
 きっと、そこにはどうしようもない理由があったに違いない。
 もしこんな幸福な時間の中にいて、永遠に続くものと信じていて、急にそれらが音を立てながら崩れ落ちてしまったのだとしたら。
 僕があそこまで堕落してしまった理由が、少し分かったような気がした。
 残りのアルバムをすべて箱から取り出していき、最後にクマのぬいぐるみを手に持った。
 ゲームセンターでユリナに取ってあげたクマによく似ていた。
 いくつになっても、こういう類のぬいぐるみは好きだったのかもしれない。
 彼女らしいとは思うが。
 僕は再びポケットに入れた二通目の手紙を開き、内容を読み返してみる。
〈彼女の本当の思いに気付け。彼女が無意味に君を閉じ込めたりするはずないだろう〉
 書かれた内容から、彼女が僕をこの世界に閉じ込めたことは間違いなさそうだ。
 でも、それは意味があってのことだった。
 その意味が何なのか、想像もつかない。
 でも僕は、重要な何かを見落としていたのかもしれない。
 僕には話すことのできなかった、彼女なりの理由があって、それがこの世界を作り出した動機に繋っているのだろう。
 まだあの部屋には、僕の知らない秘密がある。
 僕は再び立ち上がり、玄関から飛び出していった。