床下点検口?そんな場所にあるなんて知らなかった。
 しかしこの中に一体何があるというのだ。
 僕は手紙を折って封筒に戻し、足早に部屋の中に戻っていく。
 もう煙草を吸う気は失せていた。
 手紙に書かれている内容を、早く確かめたいと思った。
 自室に入って畳の位置を確認し、「ここだよな」とその部分を踏んで確認してみる。特段たわんだり違和感があるという事は無かった。
 とりあえず開けてみるか。
 押入れを開け、工具箱の中から使用頻度の少ないマイナスドライバーを取り畳の隙間に差し込む。
 てこの原理で思いっきり押し上げると畳が浮いてそのまま手で押し上げていく。
 体が大きければこれくらい難無くこなせるのだが、今の僕はこれだけの作業でも息がゼエゼエと上がった。
 中には下地板が一部四角に切り取られ、丸い手掛けが二つあった。
 ここを開けると床下に潜れるのだろう。
 手紙に書かれている位置どおりの場所だ。
 この手紙主は僕の事をどこまで知っているのだろうか?
 部屋の配置なんて、一体どうやって分かったんだ?
 点検口を開けてみると、そこには赤い箱が一つ置いてあった。
 両手でそれを引っ張り上げると埃が舞い軽く咳き込んだ。
「こんな箱・・・入れた覚えはないぞ」
 手紙の差出人がこっそり潜ませたのだろうか?
 でもどうやって・・・。
 箱の蓋を開け、中を覗いて見る。
 そこには水色のカラーアルバムが三つと、首に赤いリボンをしたクマのぬいぐるみが入っていた。
 リボンの中心にユリナと金色の糸で刺繍が施されているのを見て、僕はこれらの品が何を意味するのかをなんとなく理解した。
 カラーアルバムには案の定、大人姿の僕とユリナが映っていた。
 二人共とびっきりの笑顔をしていて、自分の笑顔がまるで別人の様に輝いていた。
 スマートフォンで写真を簡単に撮ることのできるこの時代で、わざわざ写真版に印刷してアルバムにまとめるなんてめんどくさい事をするんだなとも思うが。
 写真の多さから、彼女と過ごした時間が想像以上に長かったことが分かった。
 観光地で自撮りをして笑い合う姿から、パジャマの格好でふざけ合っている姿、彼女の無防備な寝顔など、様々だった。
 そんな楽し気な二人の写真を見て、それらが床下に隠されている所を見て、僕はそこに違和感を感じた。
 現役で恋人同士だったとしたら、わざわざそれを床下に隠したりするだろうか。