何も考えたくなくて、しばらく自室のベッドで横になっていた。
目を閉じると案外瞬間的に意識を失っていて、目が覚めた後はしばらく頭がボーとしていた。
気持ちが沈んだ後でも、空は憎たらしいほどの晴天を維持していた。
彼女は、やっぱり戻ってきていなかった。
アパートの裏側に回り、煙草を吸いに行った。
彼女のいない今こそこそする必要もなくなったのだが、まだ煙草とライターは水道メーターの中に隠しているままだ。
回収したらまた堂々と部屋の中で吸うことができる、そう思っても気分が優れることはなかった。
地面に埋め込められた水色の蓋に指を掛け、それを開ける。
そこにはまた、白い封筒が新しく入れられていた。
案外僕はこの手紙の続きを期待してここにきたのかもしれない。
封筒を取り中身を取り出すと、以前と同じように二つに折られたA4のサイズの紙が出てきた。
紙を開き、そこに書かれた内容に目を通す。
〈彼女の本当の思いに気付け。彼女が無意味に君を閉じ込めたりするはずがないだろう〉
二行に分けられてそう書かれていた。
下の方には長方形が複数描かれ、その内の一つが矢印で指されていた。
〈絵心はないが、お前の部屋の畳を書いたつもりだ。矢印で指している畳を捲れば床下点検口がある。それを開けてみろ〉