レンガ調のタイルが敷かれた歩道を自転車の車輪を転がしながら進んでいく。
 一定の間隔で植栽や薄茶色の電柱が立ち、周りには高層ビルやマンションが多く建ち並んでいた。
 すっかり街中の中心部で観光客受けを狙ったお店が多く設営されている。
 片側三車線の大通りにでると注意喚起の意味を無くした信号機と車一台も走っていない広大な道路が人類に取り残された産業廃棄物のようで、それまでに消費された資源類が虚しく思えた。
 本当に余計なものばかりを作ってきたんだな、僕達人間は。
 ユリナは律儀にも横断歩道の線に沿って道路を横断し、記憶の匂いを手掛かりに進み続ける。
 渡った先にあるのは地元のシンボルともいえる地上十四階のタワーがあった。
 壁面は全面的に緑化され、一部の壁は外壁が取り除かれ骨組みが剥き出しになっていたが、あれも一応デザインなのだろう。
 僕が生まれて少しした頃に建てられ、当時は現代建築を活かした建築物として話題になっていた。
 それも一時的なブームで時間が経てば人通りも減っていったが、あの時が一番この街が盛んだった頃だろう。
 彼女は自動ドアの前で立ち止まり、空を仰ぐように上階を眺めていた。
 目指していた目的地はここなのだろうか?
 彼女は何も言わず、自動ドアに近づき開いた先へと足を踏み入れて行った。