「すごい!どうやったの!?ミラクルプレーだよ!」と彼女は目を見開いて両手で口を覆い、その場で何回も飛び跳ねている。
 僕は苦笑いしながら取り出し口からクマを引っ張り出す。
 両手で抱えて振り返った時、ユリナが物欲しそうにこちらを上目遣いに見ていた。
「あげるよ」
 クマをお姫様抱っこしている形で彼女に近づける。
「いいの!?」
「うん、欲しいんでしょ?」
「ありがとー!リョウ君大好き!」
 クマに飛びつくように両手で受け取り、ギュッと力強く抱きしめていた。
 その時クマが幸せそうに笑っているように見えた。
「嬉しいなぁ」
 目を細めて言う彼女に、思わずドキッとした。可愛い子だ。
 わがままで意地っ張りで気分の移り変わりが激しい子だけど、それら全てが素敵に思えてしまうくらい、ユリナは可愛い子だと思った。

 屋上のガーデンテーブルに着きようやく腰を下ろすことができた。
 雲一つない憎たらしいくらいの晴天で、太陽の光は髪の毛をじりじりと焼いてくるようだった。
 この世界に来て結構時間は経っているはずだが、太陽は依然として僕達の真上にあり沈む気配を見せなかった。
「リョウ君、アイス溶けるよ?」
 目の前ではユリナがカップに入ったアイスクリームをプラスチックのスプーンで掬い口の中に運んでいる。
 イチゴ味のアイスは薄ピンク色で、彼女の口につくと口紅を塗ったように違和感なく馴染んでいた。
 僕は手に持った自身のカップに目を落とし、チョコレート味のアイスは既に上端の部分が解け始めていた。