「スー、スー」
 真横に垂れた彼女の顔から寝息のような音が聞こえる。
 まさか、寝たのか?やれやれ・・・冗談じゃない。
 僕の耳元に熱い吐息が一定の間隔でかかる。
 くすぐったくて彼女を払いのけたい衝動を抑えながら僕は身を捩る。
 少女の心境と言うのは未知の領域だな。理解不能だ。
 十分程この姿勢を保持しただろうか、さすがに彼女の熱を受けすぎて体が燃える様に熱かった。
 脱出しよう。
 そう決めて彼女を起こさないよう慎重に体を動かす。
 両手で彼女の肩をそっと持ち上げ、わずかにできた隙間から素早く外に出た。
 腫れ物に触るように優しく畳の上に彼女の体を置く。
「スー、スー」
 何も気づいていない様子で気持ちよさそうに寝息を立て続けている。
 今のうちだ。足音を鳴らさないよう慎重に足を踏み出していく。
 少しでも足先が物に触れてしまわないよう、ゆっくりと。
 そろり足で玄関先まで向かい、靴を履いたところで一旦安心する。
 ドアノブに手を掛け、彼女を部屋に残して外に出た。