パキパキに塗装の剥げたハンガーに錆びたチェーンが吊るされ、それらが前後に金属音を立てながら揺れている。
ブランコに乗っているのは小学四、五年生位の少女だった。
肩先まで伸びたサラサラな黒髪は動きに合わせて靡き、薄手のニットウェアとテニス選手が着ていそうな短いフレアスカートからは健康的な白い肌が露出していた。
遠目から表情までは読み取ることはできないが、とても近づいて確かめようとする気にはなれなかった。
むしろ一刻も早くこの場から立ち去りたかった。
ずっと夢だと思っていた世界に知らない少女が目の前にいる。
夢でも何でもなかったのかもしれない。
僕以外誰もいない世界なんて、いくらなんでも都合が良すぎたんだ。
公園から背を向けようとした、その時だった。
「ねぇ!君!」
陽気な声で呼び止められ、僕は動こうにも動けなくなった。
無視して走り去ろうかと迷っている間、少女はブランコから飛び降り僕の元へと全速力で駆けてきた。