帰路を進んであと二百メートル程でアパートに着く時だった。
僕の袋と籠を抱えた両手はプルプルと震え始め、足も一歩踏み出す度脹脛が腫れるような痛みが走るようになった。
歩きっぱなしでさすがに疲れた。
体の消耗も小学生並みに戻っているようだ。
少し歩いた先に公園が見えた。
塗装が剥がれかかっている遊具がここからでも確認できる。
本来帰る方向とは違うが、休憩がてら寄り道することにした。
一歩一歩ゆっくりとした足取りで公園へと近づいていく。
囲われたフェンスが目の前まできたとき、キーキーと錆びれた金属音が公園内に鳴り響いていた。
音の正体をここからでは特定できなかった。
施錠されていない金網フェンスが風に煽られ音を立てているのだろうかと想像を巡らせたが、この時僕の思考回路はまともではなかった。
公園内で聞こえてきたのだ、誰かいるのかと考えるのが普通だっただろう。
しかし僕の脳内にはこの世界には自分以外誰もいないという自らが立てた前提条件がある。
その前提を揺るがせたくないという思いが自然に働いたのかもしれない。
入口に立ち公園内を見渡すと、僕は音の正体に気付いて呆気にとられる。
僕の他にもう一人、この世界に存在していたからだ。