当初の目的通り僕はコンビニに向かう。
足取りは足枷が外れたように軽くなり、ルンルン拍子で店内へ入っていった。
籠を取りお酒と煙草といった快楽中枢を刺激するものばかりを選んでいく。
発泡酒なんて論外、ビールにハイボールと日本酒を好き放題手に取っていき、レジの後ろにある煙草類をお店の箒で叩き落していきフロアに落ちたおこぼれを夢中でかき集めた。
籠に入るだけ詰め込み、後は生ハムやチーズなどお酒似合いそうなつまみを適当に選んで入れると籠はあっという間に満杯になった。
これだけあれば夢で過ごす間はまず不足しないだろう。
店内を散々荒らした挙句僕は右手にコンビニの籠、左手に先程の服屋で取ってきた服を詰めたビニール袋を持ちお店を出た。
やっていることは強盗と大差ない。
しかし罪悪感は微塵も湧いてこなかった。
誰にも消費される当てのない製品をもらっただけ。
賞味期限が切れ破棄寸前の食品を譲り受けたようなものだ。
悪びれる必要性はないしむしろ感謝してほしい位だ。
歩道を緊張感無く進んでいき口笛を吹く余裕さえあった。
ここまで周囲を気にせず堂々と外を歩けたのはいつぶりだろう。
今の僕に怖いものなんて一つもなかった。
世界を支配したといっても過言ではない。
外部要因の大本、即ち人がいなくなってくれたことで僕に映る世界はクリアなものへと変貌していた。
安心安全に包まれた空間、自分と言う自我が真の意味で生きられる場所。
ずっと嫌いと思っていたけど、ただ一つの問題を解決することで世界がここまで楽しい場所になるなんて知らなかったな。
部屋に引き籠っていた時は影の生活を続ける弊害で太陽を浴びると溶かされるような感覚を覚えると考えていたけど、今思えば外に出たくない自分自身への言い訳に過ぎなかったわけだ。
現に今、太陽を体全体に浴びているけどむしろ清々しい気持ちになれた。
結局世界は綺麗で、それを汚しているのは人間で、歪めている根本を絶つことでありのままの情景を知ることができる。
それを感じるのも僕という一人の人間だからそこは何とも言えないけど。
多勢の有象無象がいなければ法も秩序も存在しないし、社会と言う歪んだ形の見えない怪物を作り出すこともなかった。
人が増え過ぎたんだよ、元の世界は。