「結婚しよう」
「・・・うんっ!」
きっとこれは、夢じゃないよな?
あんな夢を見た後だと尚更区別がつきそうになかった。
でも目の前で屈託なく笑う彼女を見て、どっちでもいいかと僕は思う。
だって、現実だろうが夢の中だろうが、僕達の心は同じ世界を通して繋がっているのだから。
そこに彼女がいてくれるなら、それがどんな場所であろうと僕は構わない。
胸の中で広がる彼女の温もり、耳元からクスクスと聞こえる彼女の笑い声、背中に回された両手が強く締められる感触。
感じる彼女の全てが、愛おしくて堪らない。
気づけば夕日は沈んでいて、周囲は街明かりで煌びやかに照らされていた。
展望台はいくつもの木柱の下から電球色の光が放たれ、神聖な地へと変貌を遂げていた。
抱き寄せた彼女の体を、僕はさらに強く引き寄せる。
ずっと孤独なまま生きていくのだと思っていた、誰にも愛されることなく死んでいくのだと諦めていた。
なのに、君が笑ってくれるだけで、その笑顔を見るだけで、世界の何もかもが変わってしまったんだ。
全くおかしな話だよ、恋なんて抽象的なもの一番信じられないと思っていたはずなのに、気づけば僕の視界には君しか映っていなかったんだから。
だから今は、それが哀しくて仕方がないんだ
ここから始まった美しい日々の事を、僕は一生忘れない。
だから、ありがとう。
こんな僕の事を好きになってくれて。
いつかまた出会うことがあるなら、僕は何度でも、同じ言葉を伝え続けよう。
君の事を愛している。
何度でも、何度でも、君にそう伝えるよ。