どこにもいかないでほしい、そんな思いを伝える様に僕は彼女の体を強く抱きしめた。
どれくらいそうしていたのか分からない、僕はとめどない涙を流し続け時々悲痛な呻き声を無意識に漏らす。
彼女の頭を撫でる指先の柔らかさと、抱きしめた時に感じるほのかな体温が荒れた心を宥め癒してくれるようで落ち着いていく。
永遠にこうして抱き合っていたい、彼女の存在を感じ続けていたい、そんな切実な願いが一つも叶わないことは分かり切っているのに、思わずにはいられない。
「愛している」
ただ、何度もそう伝え続ける。
その度「私も、愛してる」と彼女は返してくれる。
互いの気持ちを確認し合う度、心の中を覆った靄が少しずつ消えていくような気がした。
「そういえば、リョウ。夢の中でここに来た時、私に言ってくれた言葉があったよね」
彼女はふと思い出したように言う。
夢の中、あれはショッピングモールの帰り道の途中のことだった。
彼女が突然あらぬ方向に歩き始め、彼女の背中を追いかけて辿り着いた場所がここだった。
夕日に染まる街を見て、彼女は訳も分からず涙を流していた。
今思えば、わずかに残った僕達の記憶が当時の思いを呼び起こし、彼女が僕と決別するに至った葛藤や悲しみも連鎖的に反応してしまったのだろう。
「僕、なんて言ったんだっけ?」
「もう!なんで覚えてないのかな!リョウの悪い所だよ」
「ごめん」
胸元から顔を上げると、頬を膨らませてこちらを見る彼女と目が合った。
そんな顔をされても、思い出せないのだから仕方がない。
「リョウは、あの時私に“生きてみるしかない”って、そう言ったんだよ。私、その言葉にどれだけ救われたか・・・」
あぁ、そのことか。
どれくらいそうしていたのか分からない、僕はとめどない涙を流し続け時々悲痛な呻き声を無意識に漏らす。
彼女の頭を撫でる指先の柔らかさと、抱きしめた時に感じるほのかな体温が荒れた心を宥め癒してくれるようで落ち着いていく。
永遠にこうして抱き合っていたい、彼女の存在を感じ続けていたい、そんな切実な願いが一つも叶わないことは分かり切っているのに、思わずにはいられない。
「愛している」
ただ、何度もそう伝え続ける。
その度「私も、愛してる」と彼女は返してくれる。
互いの気持ちを確認し合う度、心の中を覆った靄が少しずつ消えていくような気がした。
「そういえば、リョウ。夢の中でここに来た時、私に言ってくれた言葉があったよね」
彼女はふと思い出したように言う。
夢の中、あれはショッピングモールの帰り道の途中のことだった。
彼女が突然あらぬ方向に歩き始め、彼女の背中を追いかけて辿り着いた場所がここだった。
夕日に染まる街を見て、彼女は訳も分からず涙を流していた。
今思えば、わずかに残った僕達の記憶が当時の思いを呼び起こし、彼女が僕と決別するに至った葛藤や悲しみも連鎖的に反応してしまったのだろう。
「僕、なんて言ったんだっけ?」
「もう!なんで覚えてないのかな!リョウの悪い所だよ」
「ごめん」
胸元から顔を上げると、頬を膨らませてこちらを見る彼女と目が合った。
そんな顔をされても、思い出せないのだから仕方がない。
「リョウは、あの時私に“生きてみるしかない”って、そう言ったんだよ。私、その言葉にどれだけ救われたか・・・」
あぁ、そのことか。