(あ、四つ葉)


 好きな人が出来た。

 生まれて初めて告白された。


 誰かを想うことは光だ。生きてる世界がまるで全部違って見える。
 見つけた四葉のクローバーを手に、あの人に渡そうと思いたつ。なんて言うかな。笑うかな。すごいなって言ってくれるかな。


「逸人、お前彼女出来たんだって?」


 サッカー部のチームメイトに茶化される、背が高くてまっすぐな彼のこと。思わずその声にぴゃっと物陰に隠れたら、会いたい気持ちを引っ込めてほのかに頬を赤らめる。

 恋って奇跡だ。太陽だ。先輩もきっと、


「うん」

「一年の藍沢さんだろ、ずっと狙ってたもんな」

「えー。じゃあ今度の合コンこねーの」

「行くけど」

「うーわ出たよクズ男っ。藍沢さんが聞いて泣くぞ!」

「それはそれこれはこれ。だってあいつ顔可愛いけどそれだけじゃん。学校では隣に置いたら花があるからなんとなく置いてるだけ」

「ひでーっ」

「今度味見する? 俺のお古だけど」

「いらねーよっ」




 あはは、と明るい声で笑う背中が、急に遠くへ消えていく。

 脱力した手元から落ちた四葉が足元の三つ葉に紛れて見えなくなってから、視界も涙で濁ってしまった。幸せ。そうだ、幸せを探さないと。

 屈んで、探して、ぽたぽたと落下する。幸せ。そう、私はこの瞬間。誰かを想うことは幸せで、

 自分の好きな人が自分のことを好きになってくれる、そんなのは奇跡だって思い知る。