「はっきりしろよ」

武が声を低くして凄む。いつもヘラヘラしている武が真剣な顔をしているというギャップと180センチ超えの高身長とが相まって、友達であるはずの僕だったが正直ビビった。

「は、はい。好きです」

「いつから」

「去年の夏前くらいから」

「どうして」

「図書室で会って、話しかけられて、それから」

「それ初恋か」

「初恋です」

僕は尋問室で証拠を突きつけられた容疑者だった。
自白せざる終えない。

武は考え込んでいたが、しばらくすると、突然さっきと打って変わって満面の笑みで僕の顔を見た。

「決めた。お前の初恋に協力する」

「は?」
言葉の意味が分からなくて間抜けな声が漏れた。

「だーかーら、お前の初恋の手助けをするつってんの」

「そ、それってどうやって」

「うーん、美香さんと莉子ちゃんって仲良しじゃん。だから、莉子ちゃんに協力を仰ぐの。まあ、俺も莉子ちゃんと親睦深めれるし、奏太も一歩前進して一石二鳥ってわけ」

なんか分からないけど辻褄は合っているよな気がして、なるほど、とつぶやいてしまった。

「そうと決まったら莉子ちゃんのところ行こう!」

「え、係の集まりは」

僕が質問を全部口に出す前に、武は近くを通った同じ係のクラスメイトに、何か大事なことがあったら後で伝えてくれと頼んでいた。
そのクラスメイトも武の人望おかげなのか勢いのせいなのか、文句一つ言わずに引き受けてくれていた。
武に腕を引っ張られて元来た道をを走りながら、相変わらず武は僕に出来ないことをサラッとやってのけるなあと思った。

8組に着くと武はガラガラッとドアを開けて、教室中に聞こえる大きな声で「莉子ちゃんいるー?」と呼んだ。

その場にいた全員、20人以上の生徒が不法侵入者である僕らに注目していた。
武に、声大きすぎだよ、と注意したかったが武は気にしていないようだった。
違うクラスの人から注目を浴びるのは、同じクラスで目立つ100倍くらい恥ずかしいことだ。
幸いなことに美香はその場にいなかった。
しかし僕は顔を見られないように下を向く。

「私?」

僕らの後ろから女の子の声が聞こえた。

驚いてパッと振り向くと、そこに大きな目で僕達を見つめるツインテールの女の子が立っていた。

近くで見ると、よりその子の目力が感じられてドギマギした。

「おっ、そうそう。俺達莉子ちゃんに話があってさ、ちょっと今いい?」

莉子は武を一瞥したあと、僕を値踏みするかのように僕の頭からつま先を一往復した。

「いいわよ。裏庭行く?」

「いいね、人に聞かれたら困る話だし」

そういって武は僕に目配せする。
確かに聞かれたくない話ではあるけど、その目配せはあからさますぎないか。

そうして僕達は裏庭に向かった。
途中、武はダンス部がバスケ部の試合の応援に来た時に少しだけ莉子と話したことを教えてくれた。莉子もその時に事を覚えているようで、面白い人だと思ったと言っていた。
僕は武の今までの様子から、二人は初対面だと勝手に思っていたので少し驚いた。