「白山本君、あのね、放課後、ちょっといいかな」
 隣のクラスの子が真っ赤な顔をして、ささやいてきた。
 えっまさか、いやいや、そんなわけは、と思いつつ、俺は胸騒ぎを抑え込む。

 そんな俺の背後では、例によって四方河が、自分の席に座っているだけなのに、次から次へと女の子がチョコを持って、手渡しては去ってゆく……という、一人勝ち状態なのだった。
 わらわらわらわら来る。
 行列になっている。
 見ると、廊下にまで女の子が溢れていて、みんな真剣な顔をしたり、祈るように手を組んだりしながら、手に手にチョコの包みを持っているのだった。
 (あの中身がみんなうんこウヒヒヒヒ)

 野球部の部室で、今日の放課後はチョコ祭りになるのだ。
 みんな一斉にチョコを取って包み紙をとき、ソレッとばかりに喰いつくのだが、それもこれも全部うんこ。
 (シュールだなあ)
 まあ、美味しければいいのだけど。