「焔。」
「おお、黒蓮殿。」
 焔はすでに酒が入っているのか、顔を赤くしている。
「…また飲み過ぎそうだな。」
「今日くらいいいじゃろう。お祝いなんじゃから。」
「……。」
 黒蓮が呆れているのをよそに、焔は酒を仰いだ。
「…今回も、世話になったな。」
「雪月殿が来て、お主は本当に変わったのう。」
「そうだな。こんな日が来るとは思っていなかった。」
 同じ日々を繰り返すだけで、全てが止まっているようだった黒蓮の時間は、雪月が来たことで確かに動き始めたのだ。
「雪月殿は他者を思い、寄り添うことが出来るからのう。じゃが、決して流されることはない、現実的な優しさを持っておる。」
「ああ。俺は雪月のそういう部分に惹かれたんだと思う。」
 焔は嬉しそうな、泣きそうな瞳で黒蓮を見つめていた。