「…。」
「それは私も同じです。ですがこのままでは、誰も、あなたも救われません。」
だが黒蓮は視線を逸らし、思い悩んでいる。牙鋭をこのまま見逃したくないのだろう。それは何より自分のためであるとわかっているからこそ、雪月は申し訳なく感じた。
黒蓮の周りに渦巻く風と雷電はかなり弱くなってきている。雪月は更に黒蓮に近づいた。それでも鋭い風が頬を掠める。バチバチと電気が身体中を走るのを無視して雪月は足に力を込めた。
「っ雪月…⁉︎」
黒蓮は目を見開いて何か言おうとしたが、突進する勢いで抱きついてきた雪月に押し倒された。
「私は黒蓮様が誰かを傷つけるところなど見たくありません! 他者を救う。それは簡単なことではないですが、大切で、素晴らしいことです。そう教えてくれたのは黒蓮様ではないですか!」
涙ながらにそう訴えた雪月を黒蓮は呆然と見つめ返した後、「すまなかった。」と言葉を漏らした。そして目を伏せると、煙と共にシュウ…と音をたてて鋭い牙と角が小さくなり、やがて人間の姿になった。
「自分の手で救えるものは、自分が肩入れしたものだけだ。簡単なことなのに考えられていなかった。」
黒蓮は雪月の存在を確かめるように強く抱きしめる。
「俺は雪月がいないとわかったとき、全てを失ったような気がした。だが、お前が止めてくれていなかったら、本当に全てを失うところだった。ありがとう。」
黒蓮の表情は見えないが、声は震えている。
「でも、私は黒蓮様が来てくれるって信じてました。私の方こそありがとうございます。」
「それは私も同じです。ですがこのままでは、誰も、あなたも救われません。」
だが黒蓮は視線を逸らし、思い悩んでいる。牙鋭をこのまま見逃したくないのだろう。それは何より自分のためであるとわかっているからこそ、雪月は申し訳なく感じた。
黒蓮の周りに渦巻く風と雷電はかなり弱くなってきている。雪月は更に黒蓮に近づいた。それでも鋭い風が頬を掠める。バチバチと電気が身体中を走るのを無視して雪月は足に力を込めた。
「っ雪月…⁉︎」
黒蓮は目を見開いて何か言おうとしたが、突進する勢いで抱きついてきた雪月に押し倒された。
「私は黒蓮様が誰かを傷つけるところなど見たくありません! 他者を救う。それは簡単なことではないですが、大切で、素晴らしいことです。そう教えてくれたのは黒蓮様ではないですか!」
涙ながらにそう訴えた雪月を黒蓮は呆然と見つめ返した後、「すまなかった。」と言葉を漏らした。そして目を伏せると、煙と共にシュウ…と音をたてて鋭い牙と角が小さくなり、やがて人間の姿になった。
「自分の手で救えるものは、自分が肩入れしたものだけだ。簡単なことなのに考えられていなかった。」
黒蓮は雪月の存在を確かめるように強く抱きしめる。
「俺は雪月がいないとわかったとき、全てを失ったような気がした。だが、お前が止めてくれていなかったら、本当に全てを失うところだった。ありがとう。」
黒蓮の表情は見えないが、声は震えている。
「でも、私は黒蓮様が来てくれるって信じてました。私の方こそありがとうございます。」
